カニ先生、高校物理を科学的に攻略する

カニ先生が受験生に高校物理を科学的に攻略する方法を伝授します。

カニ先生の2018年_日本医科大学_物理_解答解説!

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受験生の皆さま、カニ先生です。

 

本日は、2018年日本医科大学の物理の問題を解答解説します!

問題は載せていませんので、各自どこかから購入するなり、入手するなりして下さいね!

 

[目次]

[1] 人工衛星万有引力

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( v_{\small 0}=\sqrt{\dfrac{\;G M\;}{\;r\;}} \)

\( T_{\small 0}=2\pi\sqrt{\dfrac{\;r^3\;}{\;G M\;}} \)

\( \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}}=\dfrac{r}{\;R\;} \) \( \dfrac{\;v_\text{A}\;}{v_{\small 0}}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}} \)
\( \dfrac{T}{\;T_{\small 0}\;}=\left( \dfrac{R+r}{\;2r\;} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \)    

解説

(1)

人工衛星の質量を\( m \)、等速円運動する人工衛星の速さを\( v_{\small 0} \)と置くと、

$$ m \dfrac{\;v_{\small 0}^2\;}{r}=G\dfrac{\;mM\;}{r^2} $$

これを\( v_0 \)について解くと、$$ v_0=\sqrt{\dfrac{\;G M\;}{\;r\;}} \tag{①} $$

(2)

求める周期を\( T_{\small 0} \)と置くと、$$ T_{\small 0}=\dfrac{2\pi r}{v_{\small 0}}=2\pi\sqrt{\dfrac{r^3}{\;G M\;}} $$

(3)

円軌道Aおよび楕円軌道Bにおける人工衛星の速さをそれぞれ\( v_\text{A} \)、\( v_\text{B} \)と置くと、ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)より、

\( \dfrac{\;1\;}{2}rv_\text{A}=\dfrac{\;1\;}{2}Rv_\text{B} \)

求める値は、$$ \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}}=\dfrac{r}{\;R\;} \tag{②} $$

(4)

エネルギー保存則より、$$ \dfrac{\;1\;}{2}mv_\text{A}^2+\left( -G\dfrac{\;mM\;}{r} \right) =\dfrac{\;1\;}{2}mv_\text{B}^2+\left( -G\dfrac{\;mM\;}{R} \right) $$

これを②の\( \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}} \)を用いて\( v_\text{A} \)について解くと、$$ v_\text{A}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}\cdot\dfrac{\;G\;}{r}} $$

①の\( v_{\small 0} \)を用いると、\( \dfrac{\;v_\text{A}\;}{v_{\small 0}}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}} \)となる。

異なる軌道の速さの関係について聞かれた場合は、ケプラー第2法則(面積速度一定の法則)とエネルギー保存則を連立方程式を思い出しましょう。

(5)

楕円軌道の周期を求める周期を\( T \)と置くと、ケプラー第3法則(周期と長軸半径の関係式)より、

$$ \dfrac{\;T_{\small 0}^2\;}{r^3}=\dfrac{T^2}{\;\left( \dfrac{R+r}{2} \right)^3\;} $$

求める値は、\( \dfrac{T}{\;T_{\small 0}\;}=\left( \dfrac{R+r}{\;2r\;} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \)

楕円軌道の周期は、ケプラー第3法則(周期と長軸半径の関係式)を利用しよう。普段使わないから忘れがちだ。

 

[2] 平行板コンデンサーと静電エネルギー

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( \dfrac{\;\epsilon aV^2}{2d^2} \)

\( \dfrac{\;\epsilon aV}{d} \)

\( \dfrac{\;\epsilon aV^2}{3d} \) \( -\dfrac{\;\epsilon aV^2}{6d} \)
\( \dfrac{\;4\;}{3}V \)    

解説

(1)

\( \text{S}_1 \)のみを閉じると、A には\( -Q_1=-\dfrac{\;\epsilon a\;}{d}V \)が帯電し、

Bには\( +Q_1 \)が帯電する。

金属板AB間の電場が\( E = \dfrac{\;V\;}{d} \)より、

金属板A上の電荷が金属板B上に作る電場は\( E_\text{AB}=\dfrac{\;1\;}{2}E= \dfrac{V}{\;2d\;} \)となる。

したがって、金属板Aと金属板Bの間にはたらく力は、\( F=\dfrac{\;1\;}{2}Q_1E= \dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d^2} \)となる。

金属板AB間の電場\( E \)は、\( E_\text{A→B} \)と\( E_\text{B→A} \)の和になるんだったよね。だから\( E_\text{A→B} \)は、\( E \)のちょうど半分として考えればOKね。

(2)

図2において、金属板AとBからなるコンデンサーによる電荷を\( Q_\text{AB} \)、金属板BとCからなるコンデンサーによる電荷を\( Q_\text{BC} \)とすると、金属板Bに帯電する電気量は\( Q_2 \)は、\( Q_\text{AB} \)と\( Q_\text{BC} \)の和となります。

したがって、\( Q_2=Q_\text{AB}+Q_\text{BC}=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}+\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{d} \)

となります。

(3)

スイッチを閉じたまま、外力によって金属板Bを金属Cの方向に距離\( d \)移動させた後、金属板Bに帯電する電気量を\( Q_3 \)とすると、

\(Q_3=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{3d}+\dfrac{\;\epsilon aV\;}{d}=\dfrac{\;4\epsilon aV\;}{3d} \)となる。

電池がした仕事は、\( W_\text{E}=(Q_3-Q_2)V=\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{3d} \)となる。

電池がした仕事は、\( \Delta QV\)です。スイッチ開閉前後の電気量の変化\( \Delta Q \) を計算しましょう。

(4)

外力によって金属板Bを移動する前の静電エネルギーを\( U_1 \)、移動後の静電エネルギーを\( U_2 \)とすると、

\( U_1=\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{2d}\right) V^2 +\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{2d} \right) V^2=\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d} \)

\( U_2=\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{3d} \right) V^2 +\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{d} \right) V^2=\dfrac{\;2\epsilon aV^2\;}{3d} \)

このとき外力がした仕事を\( W \)とすると、エネルギーと仕事の関係より、

$$ U_1 + W_E + W = U_2 $$

\( \begin{align} W &=U_2-U_1-W_E \\ &=\dfrac{\;2\epsilon aV^2\;}{3d}-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d}-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{3d} \\ &=-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{6d} \end{align}\)

スイッチを閉じたまま、金属板を移動させても、金属板間の電位は一定だったよね。スイッチ開閉前後の仕事のことが聞かれたら、仕事とエネルギーの関係を使いましょう。

(5)

\( \text{S}_1 \)を開いたまま、金属板Bを元の位置に戻すと、2つのコンデンサー容量はどちらも\( \dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d} \)で、極板上の電荷は動かないと考えると、その電気量は\( \dfrac{\;Q_3\;}{2}=\dfrac{\;2\epsilon aV\;}{3d} \)と計算できます。

コンデンサーの基本式\( Q = CV \)を考えると、

Bの電位は、\( V_\text{B}=\dfrac{\dfrac{\;2\epsilon aV\;}{3d}}{\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}}=\dfrac{\;4\;}{3}V \)

 

[3] \( p-V \)グラフと熱機関

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( nRT_1\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}} \)

\( -\dfrac{\;3\;}{2}nR(T_1-T_2 \)

\( \left(\dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \) \( \dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)
\( 1-\dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)    

解説

(1)

図1のグラフより、AB間の関数は\( P=\dfrac{\;nRT_1\;}{V} \)と表せる。

A→B間は等温変化なので、この間の内部エネルギー変化\( \Delta U=0 \)

この間に気体が吸収する熱量\( W_\text{AB} \)、気体がした仕事\( W_\text{AB} \)として熱力学第一法則の式を立てると、

\( Q_\text{AB}=W_\text{AB}=\displaystyle \int^{V_\text{A}}_{V_\text{B}}\dfrac{\;nRT_1\;}{V}dV=nRT_1\log{ \dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}} } \)

気体がした仕事は、\( pV \)グラフの面積でしたね。グラフの面積といえば関数の積分ですね。このような解法は教科書レベルを超えている部分ですが、問題文に誘導もありますので、このくらいの応用は理系の生徒であれば理解しておくようにしましょう。

(2)

A→B間は断熱変化なので、気体がされた仕事を\( W_\text{BC} \)、内部エネルギーの変化量を\( \Delta U_\text{BC} \)として熱力学第一法則の式を立てると、

\( W_\text{BC}=\Delta U_\text{BC}=\dfrac{\;3\;}{2}nR(T_2-T_1) \)

断熱変化は、\( Q=0 \)です。

(3)

状態Dにおける圧力を\( P_\text{D} \)、状態Aにおける圧力を\( P_\text{A} \)とすると、

\( P_\text{D}V_\text{D}=nRT_2 \)

\( P_\text{A}V_\text{A}=nRT_1 \)

D→A間は断熱変化なので、\( PV^{\frac{\;5\;}{3}}= \)一定の式より、

\( P_\text{D}\cdot V_\text{D}^{\frac{\;5\;}{3}}=P_\text{A}\cdot V_\text{A}^{\frac{\;5\;}{3}} \)

\( \dfrac{nRT_2}{V_\text{D}}\cdot V_\text{D}^{\frac{\;5\;}{3}}=\dfrac{nRT_1}{V_\text{A}}\cdot V_\text{A}^{\frac{\;5\;}{3}} \)

この式を変形すると、\( \dfrac{\;V_\text{A}\;}{V_\text{D}}=\left( \dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\frac{\;3\;}{2} \)

断熱変化では、\( PV^{\frac{\;5\;}{3}}= \)一定の式が使えます。

(4)

(3)と同様に式変形を行うと、\( \dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{C}}=\left( \dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\frac{\;3\;}{2}=\dfrac{\;V_\text{A}\;}{V_\text{D}} \tag{①} \)

C→D間は等温変化なので、この間に加えられた熱量を\( Q_\text{CD} \)、気体がされた仕事を\( W_\text{CD} \)とすると、

\( Q_\text{CD}=W_\text{CD}=\displaystyle \int^{V_\text{C}}_{V_\text{D}}\dfrac{\;nRT_2\;}{V}dV=nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}} \)

(1)の\( Q_\text{AB} \)を用いると、

\( \dfrac{\;Q_\text{AB}\;}{Q_\text{CD}}=\dfrac{\;nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}}\;}{nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}}}=\dfrac{\;T_1\;}{T_2}\times\dfrac{\;\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}}\;}{\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}}} \tag{②} \)

①より、\(\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}=\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}} \tag{③} \)

②、③より、\( \dfrac{\;Q_\text{AB}\;}{Q_\text{CD}}=\dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)

物理や数学では、前問の式を利用して計算するということがよくあります。式を整理しながら、うまく計算を進めるコツを掴みましょう。

(5)

熱効率の式より、\( e=\dfrac{\;Q_\text{AB}-Q_\text{CD}\;}{Q_\text{AB}}1-\dfrac{\;Q_\text{CD}\;}{Q_\text{AB}}=1-\dfrac{\;T_2\;}{T_1} \)

熱効率は、\( \dfrac{\;吸収した熱量-放出した熱量\;}{吸収した熱量} \)
で求めることができます。

 

[4] X線の発生

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( 8.2\times10^1 \)〔W〕 \( 6.6\times10^{-15} \)〔J〕
\( 1.3\times10^{16}\)〔個/s〕 連続
\( 3.0\times10^{-11}\)〔m〕    

解説

(1)

X線管の消費電力\( W \)は、\( \begin{align} W&=I〔\text{A}〕\times V〔\text{V}〕 \\ &=41\times10^3〔\text{V}〕\times2.0\times10^{-3}〔\text{A}〕\\ &=8.2\times10^1〔\text{W}〕\end{align} \)

(2)

電子の運動エネルギー\( E_e \)は、\( \begin{align}  E_e&=e〔\text{C}〕\times V〔\text{J/C}〕 \\ &=1.6\times10^{-19}〔\text{C}〕\times41\times10^3〔\text{J/C}〕\\ &=6.56\times10^{-15} \\ &≒6.6\times10^{-15}〔\text{J}〕 \end{align} \)

(3)

1秒当たりに衝突する電子の数\( n \)は、\( \begin{align} n&=\dfrac{\;I〔\text{C/s}〕\;}{e〔\text{個/s}〕} \\ &=\dfrac{2.0\times10^{-3}〔\text{C/s}〕}{\;1.6\times10^{-19}〔\text{C/個}\;〕} \\ &≒1.3\times10^6〔\text{個/s}〕 \end{align} \)

電流や電気素量などの物理量の定義と単位をしっかりと覚えて使えるようにしておきましょう。

(4)

X線管から発生するX線は,波長が連続的に分布している連続X線と特有な波長をもつ特性X線からなります。今回のように、入射した電子が失ったエネルギーがX線として放出されたものは連続X線になります。

X線には連続X線と固有X線があります。物理で用語問題が問われることは少ないですが、こういった問題を落とすのはもったいないです。計算方法だけでなく、問題の解き方や物理現象のしくみを自分の言葉で説明できるようになっておくと用語問題もすっきりと対応できるようになります。

(5)

発生するX線のエネルギーが最大となるのは、入射した電子のエネルギーが全てX線のエネルギーとなるときなので、X線の最大波長を\( \lambda_M \)とすると、

$$ \dfrac{hc}{\;\lambda_M}=W_e $$

\( \begin{align} \lambda_M&=\dfrac{hc}{\;W_e} \\ &=\dfrac{\;6.6\times10^{-34}〔\text{J}\cdot\text{s}〕\times3.0\times10^8〔\text{m/s}〕\;}{6.56\times10^{-15}〔\text{J}〕}\\ &≒3.0\times10^{-11}〔\text{m}〕 \end{align} \)

教科書通りの問題なので、特に難しいことはない問題ですが、波長が短い方がエネルギーが多いということをイメージとして身につけておきましょう。

カニ先生の2018年_日本大医学部N方式_物理_解答解説!

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受験生の皆さま、カニ先生です。

 

本日は、2018年日本大学医学部N方式の物理の問題を解答解説します!

問題は載せていませんので、各自どこかから購入するなり、入手するなりして下さいね!

 

[目次]

[1] 鉛直ばね振り子と物体の衝突

模範解答

問番号 解答 問番号 解答 問番号 解答
(1) (2) (3)
(4) (5)

解説

(1)

ばね定数を\( k \)と置くと、小物体にはたらく力のつり合いより、$$ mg=kd \tag{ⅰ}$$

求める周期は\((ⅰ) \)を用いると、$$T=2\pi\sqrt{\dfrac{\;m\;}{k}}=\sqrt{\dfrac{\;d\;}{g}}\tag{②}$$

ばね定数\( k \)が与えられていないので、文字で置いちゃましょう。

(2)

衝突直後、質量\( m \)の小物体は、振動の中心で、初速度\( v \)の単振動します。単振動する物体は、振動の中心で速度が最大になり、その速度は\( v=A\omega \)となります。

角速度\( \omega=\sqrt{\dfrac{\;k\;}{m}} \)、振幅\(A=3d\)を\( v=A\omega \)に代入し、\((ⅰ) \)を用いると、

$$v=3d\times\sqrt{\dfrac{\;k\;}{m}}=3d\times\sqrt{\dfrac{\;g\;}{d}}=\sqrt{3gd}\tag{⑤}$$

振動中心で最大速度となり、その速度は\( v=A\omega \)で与えられることを覚えておこう!

(3)

上向きを正として、衝突直後の小球の速度を\( v_1 \)とすると、

運動量保存則より、\( 2mv_0=2mv_1+mv \)

跳ね返り係数の式より、\( -ev_0=v_1-v \)

2式より、\( v_0=\dfrac{\;3\;}{4}v \tag{②}\)

単振動のことばかり考えてしまうが、あくまで最初に起こる現象は物体の衝突です。衝突といえば運動量保存則と跳ね返り係数の式が成り立つことを思い出そう。

(4)

求める速度を\( v_2 \)と置くと、

運動量保存則より、\( 2m\sqrt{3gd}=3mv_2 \)

これを\( v_2 \)について解くと、\( v_2=\dfrac{\;2\sqrt{3gd}\;}{3} \tag{④} \)

(5)

質量\( m \)の物体の単振動が質量\( 3m \)の物体の単振動に変わることにより、\( d \)の位置にあった振動中心が\( 3d \)に移動し、振動の中心は自然長から\( 2d(3d-d) \)下の位置になる。したがって衝突してからは、振動中心が自然長から\( 2d \)下にあり、振動中心から\( d(3d-2d) \)下にある位置を速度\( v_2 \)の状態から始まる単振動である。

単振動のエネルギー保存の式より、\( \dfrac{\;1\;}{2}\times 3m\times v_2^2+\dfrac{\;1\;}{2}kd^2=\dfrac{\;1\;}{2}kA^2 \)

これを\( A \)について解くと、\( A=\sqrt{5d} \tag{③} \)

物体の質量が変わると、振動中心が変化することに気をつけないとな。あとは単振動のエネルギー保存の式を利用しよう!

 

[2] 水面波の回折と干渉

模範解答

問番号 解答 問番号 解答 問番号 解答
(1) (2) (3)
(4) (5)

解説

(1)

波の基本式より、$$ v=f\lambda=fb \tag{①}$$

(2)

この問題は、S→O→Aという水面波とS→P→Aという水面波の干渉である。S→P→A\(-\)P→O→A \( =10d-8d=2d=\dfrac{\;d\;}{2}\times4 \)であり、距離の差が2分の1波長の偶数倍になるので、点Aは強め合いの点である。したがって、振幅は元の水面波の2倍である\( 2d \)となる。(⑤)

スリットOを通る道筋の水面波とスリットPを通る道筋の水面波を意識しよう。距離の差が2分の1波長の偶数倍なら強め合い、2分の1波長の奇数倍なら弱め合いの点になります。

(3)

SP\(-\)SO\( =5d-4d=d=\lambda \)であり、PとOは同位相である。スリットPを出た水面波とスリットOを出た水面波は、\(y\)軸上の点であるPOの中心\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)でちょうど強め合い、ここが定常波の腹となる。PO間における腹と腹の間隔は\( \dfrac{\;1\;}{2}\lambda=\dfrac{\;1\;}{2}d \)より、腹となる点は、\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)、\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)、\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)、\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)、\(\left( 0,\dfrac{\;3d\;}{2} \right)\)の5点である。(⑤)

PとOが同位相であることがポイントね。ここまで分かってしまえば、あとはいつも解いてる、2スリットによる干渉問題と同じ解き方で解けそう。

(4)

点Aは、PA\(-\)OA\( =5d-4d=d=\dfrac{\;1\;}{2}\lambda\times2 \)であり、強め合いの点である。点Oは、PO\(-\)OO\( =3d-0=3d=\dfrac{\;1\;}{2}\lambda\times6 \)であり、強め合いの点である。距離の差が2分の1波長の偶数倍で強め合うので、OA間に距離の差が\( \dfrac{\;1\;}{2}\lambda\times4 \)となる強め合いの点が存在する。点Oを除くと、\( x \)軸上にある強め合う点は、2つである。(②)

(5)

壁Wで自由端反射が起こるので、壁Wに関して波源Sの位置と正対する点AにSと同位相・同振幅・同じ速さで逆向きの波をだす波源S2 を置き、壁Wを外したときに生じる定常波を考える問題に置き換えることができる。したがって、\( y \)軸対象のグラフになり、かつ壁Wは腹となる。したがって、答えは②となる。

波源S2さえ置いて考えることができれば、この問題はいけそうだな。

 

[3] コンデンサーへの誘電体の挿入

模範解答

問番号 解答 問番号 解答 問番号 解答
(1) (2) (3)
(4) (5)

解説

(1)

コンデンサー容量の式より、$$C=\epsilon_0\dfrac{S}{d}\tag{⑥}$$

(2)

コンデンサーの基本式より、$$Q=CV\tag{③}$$

(3)

誘電体を挿入後のコンデンサーの電気容量は、\( \epsilon_0\dfrac{S}{\;d/2\;}=2C \)のコンデンサーと\( \epsilon_r\epsilon_0\dfrac{S}{\;d/2\;}=2\times\epsilon_0\dfrac{S}{\;d/2\;}=4C \)のコンデンサーを直列接続したコンデンサーの合成容量と同じと考えられるので、求める電気容量の式は、$$ \dfrac{1}{\;C_合\;}= \dfrac{1}{\;2C\:}+ \dfrac{1}{\;4C\;} $$これを\( C_合 \)について解くと、\( C_合=\dfrac{\;4\;}{3}C\tag{④} \)

コンデンサーの電気容量は、誘電体の挿入位置によって変わらないので、誘電体を下半分の位置まで移動し、上下で分割すると計算が見通しやすくなります。

(4)

誘電体を挿入する際に外力がした仕事を\( W \)と置き、挿入前後のエネルギーと仕事の関係式を立てると、\( \dfrac{Q^2}{\;2C\;}+W=\dfrac{Q^2}{\;2C_合\;} \)

これを解くと、\( W=-\dfrac{\;1\;}{8}CV^2 \tag{②} \)

回路の問題で仕事やエネルギーのことを聞かれたら、エネルギーと仕事の関係を利用しよう!

(5)

スイッチを閉じた後のコンデンサーは、電気容量\( C_{合} \)で電池の起電力は\( V \)に戻る。スイッチを閉じる前と後の電気量の変化分を\( \Delta Q \)と置くと、

電池がした仕事は、$$ \Delta QV=(C_{合}V-CV)V \tag{ⅰ}$$ 失われたエネルギーを\( E \)と置き、スイッチを閉じる前と後でエネルギーと仕事の関係を立てると、$$ \dfrac{Q^2}{\;2C_{合}\;}+\Delta QV+E=\dfrac{\;1\;}{2}C_{合}V^2  \tag{ⅱ}$$

\( (ⅰ) \)を用いて、\( (ⅱ) \)を\( E \)解くと、\( E =\dfrac{1}{24}CV^2 \)となる。

電池がした仕事は、\( \Delta QV \)です。

 

[4] シリンダー内の気体とピストン

模範解答

問番号 解答 問番号 解答 問番号 解答
(1) (2) (3)
(4) (5)

解説

(1)

状態1において糸の張力を\( T \)と置くと、ピストンにはたらく力のつり合いより、

$$ T+P_0S=mg+P_0S $$これを\( T \)について解くと、\( T=mg \tag{③}\)

状態1は、上室、下室ともに内部の気体の圧力は\( P_0 \)で差がないので、単純に糸と重力だけを考えるよう!

(2)

上室は断熱かつ定積変化なので、\( Q=0 \)、\( W=0 \)で\( \Delta U=0 \)である。つまり、温度と体積は変化していないので、圧力は\( P_0 \)のままである。

下室の圧力を\( P_2 \)と置くと、ピストンにはたらく力のつり合いより、

$$ P_2S=mg+P_0S $$これを\( P_2 \)について解くと、\( P_2=P_0+\dfrac{mg}{S} \tag{ⅰ}\)

下室の気体は単原子分子なので、定積モル比熱を\( C_V=\dfrac{3}{2}R \)、気体定数を\( R \)、下室の気体の物質量を\( n_\downarrow \)、状態1と状態2における絶対温度をそれぞれ\( T_0 \)、\( T_2 \)と置き、求める熱量\( Q \)についての熱力学第一法則の式を立てると、

\( \begin{align} Q &= n_\downarrow C_V\Delta T \\ &= \dfrac{\;3\;}{2}n_\downarrow R(T_2-T_0) \\ &= \dfrac{\;3\;}{2}(n_\downarrow RT_2-nRT_0) \\ \end{align} \)

状態1、状態2における状態方程式を用いると、

\( Q= \dfrac{\;3\;}{2}(P_2\cdot2V_0-P_0\cdot2V_0) \)

\( (ⅰ) \)を代入すると、\( Q=\dfrac{\;3mgV_0\;}{S} \tag{②}\)

上室・下室の気体およびピストンに成立する関係式を丁寧に整理していこう。

(3)

上室は断熱変化なので、状態3における上室の圧力を\( P_3 \)と置き、 状態2から状態3への変化をポアソンの式に代入すると、$$ P_0(2V_0)^\frac{\;5\;}{3} = P_3V_0^\frac{\;5\;}{3} $$ これを\( P_3 \)について解くと、\( P_3=2^\frac{\;5\;}{3}P_0 \tag{⑥} \)

下室は熱量を加えられているので、断熱変化ではないです。断熱変化なのは上室のみです。

(4)

上室の気体の物質量を\( n_\uparrow \)、内部エネルギー変化を\( \Delta U \)、状態2と状態3における絶対温度をそれぞれ\( T_2' \)、\( T_3' \)と置き、求める仕事\( W_H \)についての熱力学第一法則の式を立てると、\( \begin{align} W_H &= -\Delta U \\ &= \dfrac{\;3\;}{2}n_\uparrow R(T_3'-T_2') \\ &= \dfrac{\;3\;}{2}(n_\uparrow RT_3'-n_\uparrow RT_2') \\ \end{align} \)

状態2、状態3における状態方程式を用いると、

\( W_H = \dfrac{\;3\;}{2}(P_3\cdot V_0-P_0\cdot 2V_0) \)

(3)の\( P_3 \)を代入すると、\( W_H = -3(2^\frac{\;2\;}{3}-1)P_0V_0 \tag{⑥} \)

上質の変化は断熱変化です。熱力学第一法則を使って解きましょう。

(5)

ゆっくりと加熱したことから、ピストンにはたらいてる重力、上室の気体からの力および下室の気体からの力は、状態2から状態3に変化する間、常につり合っていると考えられる。したがって、重力がした仕事\( W_g \)とすると、\( W_g+W_H+W_L=0 \)

\( \therefore W_H+W_L=-W_g=-\left( -mg\dfrac{\;V_0\;}{S} \right)=mg\dfrac{\;V_0\;}{S} \)

上室の圧力を\( P_\uparrow \)、下室の圧力を\( P_\downarrow \)とすると、ピストンにはたらく力のつり合いは常に、\( P_\uparrow S + mg -P_\downarrow S=0 \)となる。 はたらく力の移動距離は3力すべて同じなので、\( W_g+W_H+W_L=0 \)が成り立ちます。

 

[5] ボーアの水素原子模型

模範解答

問番号 解答 問番号 解答 問番号 解答
(1) (2) (3)
(4) (5)

解説

(1)

陽子の周りを等速円運動する電子における運動方程式を立てると、\( m\dfrac{\;v^2\;}{r}=k\dfrac{\;e^2\;}{r^2}\tag{ⅰ} \)これを\( v \)について解くと、\( v = e\sqrt{\dfrac{k}{\;mr\;}} \tag{④} \)

円運動の運動方程式を利用して求める、この流れをつかみましょう。

(2)

\( (ⅰ) \)式を変形すると、\( \dfrac{\;1\;}{2}mv^2=\dfrac{\;ke^2\;}{2r} \tag{ⅱ} \)

したがって\( (ⅱ) \)を用いると、電子の運動エネルギーと位置エネルギーの和は、\( \dfrac{\;1\;}{2}mv^2+\left( -\dfrac{ke^2}{r} \right)=-\dfrac{\;ke^2\;}{2r} \tag{④} \)

円運動の運動方程式を利用して求める、この流れをつかみましょう。

(3)

ボーアの量子条件とは、ド・ブロイ波長の整数倍が円周になるという条件です。したがって、ド・ブロイ波長を用いると、$$ 2\pi r=\dfrac{h}{\;mv\;}\times n \tag{①}$$

ドブロイ波長の式を忘れないようにしましょう。

(4)

(1)および(3)の式より、求められない電子の速度を\( v \)を消去し、\( r \)について解くと、$$ r=\dfrac{h^2}{\;4\pi^2mke^2\;}n^2 \tag{③}$$

計測することができない電子の速度\( v \)を消去する、この流れを押さえておこう。

(5)

\( n=3 \)から\( n=2 \)に電子が移動するときに放出されるエネルギーについてボーアの振動数条件の式を立てると、\( E_3-E_2=h\nu=\dfrac{\;hc\;}{\lambda} \tag{ⅲ}\)

 (ⅲ)式に、\( E_3=-Rhc\dfrac{1}{\;3^2\;} \)、\( E_2=-Rhc\dfrac{1}{\;2^2\;} \)を代入して、\( \lambda \)について解くと、\( \lambda=\dfrac{36}{\;5R\;}≒6.5\times10^{-7} \tag{③} \)

エネルギー準位の図をイメージすると分かりやすいな。電子のエネルギーの総和は負の値になるから、\( E_3 \)の方がエネルギー準位が上になり、上( \( E_3 \) )から下( \( E_2 \) )引くと放出されるエネルギーっていう感じか。

 

大学受験生必見!志望大学別の模試の種類について解説します

受験生のみなさま、かに先生です!

 

今回は、大学受験生のみなさま向けに、模試の種類についてお話ししたいと思います。

 

大学受験生の模試の種類について

マーク模試

  • センター試験の傾向と難易度に合わせた模試
  • 河合、駿台、東進が開催
  • 本番と異なり、1日で全教科を終える
  • センター模試の点数は、力量を測ることに適している

センター試験を受ける予定の人は、必ず受けましょう。特に夏以降の模試の結果は重要で、概ね本番も同様の点数になると思ってもらって良いです。現役生でここから本番の間に急激に伸びる人もいますが、ほとんどの人は夏以降のマーク模試の平均値程度の点数になります。どこの予備校の試験かはあまり関係がないと思います。あくまでセンター目標点に対して、どのぐらい取れるかが重要です。また、センターを受けない人にも受ける価値があります。なぜならセンターの難易度は非常に安定しています。私が生徒の力量を測る上でも、センターの過去問や模試でどの程度の点数が取れるかを第一の参考にしています。1日で全教科を終えるので、体力的にきつく、特に後半に位置する高校理科は疲れて実力が発揮されない人も見てきました。実力をしっかりと出し切りたい人は、糖分補給ができるようにすると良いでしょう。

記述模試

  • 一般的な実力テスト、自分が全体の中でどの位置にいるかを知ることが目的
  • 河合は、全統記述のみ
  • 駿台は、駿台全国判定(普通レベル)と駿台全国(ハイレベル)の2つ
  • 東進は、有名大本番レベル(普通レベル)と難関大本番レベル(ハイレベル)の2つ

記述模試は、特定の大学の試験に合わせているわけではないので、あくまで一般的な実力試験と思ってもらうと良いと思います。母集団の中で自分がどの位置にいるかを知ることが目的となります。したがって、母集団の数が重要となるので、受験生の人数を考えれば、河合全統記述のみで問題ないと思っています。

志望大学別模試

  • プロの目線で志望大学の傾向に沿った問題を作成
  • 母集団は実際に志望大学を受けたい人で構成

プロの目線で志望大学の傾向を調べ、沿った問題を作っているので、その大学を絶対に受けたいと思っている人は必ず受けましょう。また、実力テストと異なり、模試を受ける人は実際に受けたい人たちになるはずなので、仮想本番での自分の立ち位置がわかります。東京大学などは、どこの予備校も作っているはずなので、全部受けられるのが理想です。また、東大レベルの問題は市販問題集にはないため、またとない練習になります。一方で、北海道大のような極めて一般的な問題傾向の大学の場合、市販問題集で十分に対応できるので、躍起になって絶対受ける必要があるとまでは言えないです。自身の余力と、もし予備校等に通われているなら先生に相談を受けるのが良いと思います。