カニ先生、高校物理を科学的に攻略する

カニ先生が受験生に高校物理を科学的に攻略する方法を伝授します。

カニ先生の2018年_日本医科大学_物理_解答解説!

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受験生の皆さま、カニ先生です。

 

本日は、2018年日本医科大学の物理の問題を解答解説します!

問題は載せていませんので、各自どこかから購入するなり、入手するなりして下さいね!

 

[目次]

[1] 人工衛星万有引力

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( v_{\small 0}=\sqrt{\dfrac{\;G M\;}{\;r\;}} \)

\( T_{\small 0}=2\pi\sqrt{\dfrac{\;r^3\;}{\;G M\;}} \)

\( \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}}=\dfrac{r}{\;R\;} \) \( \dfrac{\;v_\text{A}\;}{v_{\small 0}}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}} \)
\( \dfrac{T}{\;T_{\small 0}\;}=\left( \dfrac{R+r}{\;2r\;} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \)    

解説

(1)

人工衛星の質量を\( m \)、等速円運動する人工衛星の速さを\( v_{\small 0} \)と置くと、

$$ m \dfrac{\;v_{\small 0}^2\;}{r}=G\dfrac{\;mM\;}{r^2} $$

これを\( v_0 \)について解くと、$$ v_0=\sqrt{\dfrac{\;G M\;}{\;r\;}} \tag{①} $$

(2)

求める周期を\( T_{\small 0} \)と置くと、$$ T_{\small 0}=\dfrac{2\pi r}{v_{\small 0}}=2\pi\sqrt{\dfrac{r^3}{\;G M\;}} $$

(3)

円軌道Aおよび楕円軌道Bにおける人工衛星の速さをそれぞれ\( v_\text{A} \)、\( v_\text{B} \)と置くと、ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)より、

\( \dfrac{\;1\;}{2}rv_\text{A}=\dfrac{\;1\;}{2}Rv_\text{B} \)

求める値は、$$ \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}}=\dfrac{r}{\;R\;} \tag{②} $$

(4)

エネルギー保存則より、$$ \dfrac{\;1\;}{2}mv_\text{A}^2+\left( -G\dfrac{\;mM\;}{r} \right) =\dfrac{\;1\;}{2}mv_\text{B}^2+\left( -G\dfrac{\;mM\;}{R} \right) $$

これを②の\( \dfrac{\;v_\text{B}\;}{v_\text{A}} \)を用いて\( v_\text{A} \)について解くと、$$ v_\text{A}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}\cdot\dfrac{\;G\;}{r}} $$

①の\( v_{\small 0} \)を用いると、\( \dfrac{\;v_\text{A}\;}{v_{\small 0}}=\sqrt{\dfrac{2R}{\;R+r\;}} \)となる。

異なる軌道の速さの関係について聞かれた場合は、ケプラー第2法則(面積速度一定の法則)とエネルギー保存則を連立方程式を思い出しましょう。

(5)

楕円軌道の周期を求める周期を\( T \)と置くと、ケプラー第3法則(周期と長軸半径の関係式)より、

$$ \dfrac{\;T_{\small 0}^2\;}{r^3}=\dfrac{T^2}{\;\left( \dfrac{R+r}{2} \right)^3\;} $$

求める値は、\( \dfrac{T}{\;T_{\small 0}\;}=\left( \dfrac{R+r}{\;2r\;} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \)

楕円軌道の周期は、ケプラー第3法則(周期と長軸半径の関係式)を利用しよう。普段使わないから忘れがちだ。

 

[2] 平行板コンデンサーと静電エネルギー

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( \dfrac{\;\epsilon aV^2}{2d^2} \)

\( \dfrac{\;\epsilon aV}{d} \)

\( \dfrac{\;\epsilon aV^2}{3d} \) \( -\dfrac{\;\epsilon aV^2}{6d} \)
\( \dfrac{\;4\;}{3}V \)    

解説

(1)

\( \text{S}_1 \)のみを閉じると、A には\( -Q_1=-\dfrac{\;\epsilon a\;}{d}V \)が帯電し、

Bには\( +Q_1 \)が帯電する。

金属板AB間の電場が\( E = \dfrac{\;V\;}{d} \)より、

金属板A上の電荷が金属板B上に作る電場は\( E_\text{AB}=\dfrac{\;1\;}{2}E= \dfrac{V}{\;2d\;} \)となる。

したがって、金属板Aと金属板Bの間にはたらく力は、\( F=\dfrac{\;1\;}{2}Q_1E= \dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d^2} \)となる。

金属板AB間の電場\( E \)は、\( E_\text{A→B} \)と\( E_\text{B→A} \)の和になるんだったよね。だから\( E_\text{A→B} \)は、\( E \)のちょうど半分として考えればOKね。

(2)

図2において、金属板AとBからなるコンデンサーによる電荷を\( Q_\text{AB} \)、金属板BとCからなるコンデンサーによる電荷を\( Q_\text{BC} \)とすると、金属板Bに帯電する電気量は\( Q_2 \)は、\( Q_\text{AB} \)と\( Q_\text{BC} \)の和となります。

したがって、\( Q_2=Q_\text{AB}+Q_\text{BC}=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}+\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{d} \)

となります。

(3)

スイッチを閉じたまま、外力によって金属板Bを金属Cの方向に距離\( d \)移動させた後、金属板Bに帯電する電気量を\( Q_3 \)とすると、

\(Q_3=\dfrac{\;\epsilon aV\;}{3d}+\dfrac{\;\epsilon aV\;}{d}=\dfrac{\;4\epsilon aV\;}{3d} \)となる。

電池がした仕事は、\( W_\text{E}=(Q_3-Q_2)V=\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{3d} \)となる。

電池がした仕事は、\( \Delta QV\)です。スイッチ開閉前後の電気量の変化\( \Delta Q \) を計算しましょう。

(4)

外力によって金属板Bを移動する前の静電エネルギーを\( U_1 \)、移動後の静電エネルギーを\( U_2 \)とすると、

\( U_1=\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{2d}\right) V^2 +\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{2d} \right) V^2=\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d} \)

\( U_2=\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{3d} \right) V^2 +\dfrac{\;1\;}{2}\left( \dfrac{\;\epsilon a\;}{d} \right) V^2=\dfrac{\;2\epsilon aV^2\;}{3d} \)

このとき外力がした仕事を\( W \)とすると、エネルギーと仕事の関係より、

$$ U_1 + W_E + W = U_2 $$

\( \begin{align} W &=U_2-U_1-W_E \\ &=\dfrac{\;2\epsilon aV^2\;}{3d}-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{2d}-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{3d} \\ &=-\dfrac{\;\epsilon aV^2\;}{6d} \end{align}\)

スイッチを閉じたまま、金属板を移動させても、金属板間の電位は一定だったよね。スイッチ開閉前後の仕事のことが聞かれたら、仕事とエネルギーの関係を使いましょう。

(5)

\( \text{S}_1 \)を開いたまま、金属板Bを元の位置に戻すと、2つのコンデンサー容量はどちらも\( \dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d} \)で、極板上の電荷は動かないと考えると、その電気量は\( \dfrac{\;Q_3\;}{2}=\dfrac{\;2\epsilon aV\;}{3d} \)と計算できます。

コンデンサーの基本式\( Q = CV \)を考えると、

Bの電位は、\( V_\text{B}=\dfrac{\dfrac{\;2\epsilon aV\;}{3d}}{\dfrac{\;\epsilon aV\;}{2d}}=\dfrac{\;4\;}{3}V \)

 

[3] \( p-V \)グラフと熱機関

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( nRT_1\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}} \)

\( -\dfrac{\;3\;}{2}nR(T_1-T_2 \)

\( \left(\dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\dfrac{\;3\;}{2} \) \( \dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)
\( 1-\dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)    

解説

(1)

図1のグラフより、AB間の関数は\( P=\dfrac{\;nRT_1\;}{V} \)と表せる。

A→B間は等温変化なので、この間の内部エネルギー変化\( \Delta U=0 \)

この間に気体が吸収する熱量\( W_\text{AB} \)、気体がした仕事\( W_\text{AB} \)として熱力学第一法則の式を立てると、

\( Q_\text{AB}=W_\text{AB}=\displaystyle \int^{V_\text{A}}_{V_\text{B}}\dfrac{\;nRT_1\;}{V}dV=nRT_1\log{ \dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}} } \)

気体がした仕事は、\( pV \)グラフの面積でしたね。グラフの面積といえば関数の積分ですね。このような解法は教科書レベルを超えている部分ですが、問題文に誘導もありますので、このくらいの応用は理系の生徒であれば理解しておくようにしましょう。

(2)

A→B間は断熱変化なので、気体がされた仕事を\( W_\text{BC} \)、内部エネルギーの変化量を\( \Delta U_\text{BC} \)として熱力学第一法則の式を立てると、

\( W_\text{BC}=\Delta U_\text{BC}=\dfrac{\;3\;}{2}nR(T_2-T_1) \)

断熱変化は、\( Q=0 \)です。

(3)

状態Dにおける圧力を\( P_\text{D} \)、状態Aにおける圧力を\( P_\text{A} \)とすると、

\( P_\text{D}V_\text{D}=nRT_2 \)

\( P_\text{A}V_\text{A}=nRT_1 \)

D→A間は断熱変化なので、\( PV^{\frac{\;5\;}{3}}= \)一定の式より、

\( P_\text{D}\cdot V_\text{D}^{\frac{\;5\;}{3}}=P_\text{A}\cdot V_\text{A}^{\frac{\;5\;}{3}} \)

\( \dfrac{nRT_2}{V_\text{D}}\cdot V_\text{D}^{\frac{\;5\;}{3}}=\dfrac{nRT_1}{V_\text{A}}\cdot V_\text{A}^{\frac{\;5\;}{3}} \)

この式を変形すると、\( \dfrac{\;V_\text{A}\;}{V_\text{D}}=\left( \dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\frac{\;3\;}{2} \)

断熱変化では、\( PV^{\frac{\;5\;}{3}}= \)一定の式が使えます。

(4)

(3)と同様に式変形を行うと、\( \dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{C}}=\left( \dfrac{\;T_2\;}{T_1} \right)^\frac{\;3\;}{2}=\dfrac{\;V_\text{A}\;}{V_\text{D}} \tag{①} \)

C→D間は等温変化なので、この間に加えられた熱量を\( Q_\text{CD} \)、気体がされた仕事を\( W_\text{CD} \)とすると、

\( Q_\text{CD}=W_\text{CD}=\displaystyle \int^{V_\text{C}}_{V_\text{D}}\dfrac{\;nRT_2\;}{V}dV=nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}} \)

(1)の\( Q_\text{AB} \)を用いると、

\( \dfrac{\;Q_\text{AB}\;}{Q_\text{CD}}=\dfrac{\;nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}}\;}{nRT_2\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}}}=\dfrac{\;T_1\;}{T_2}\times\dfrac{\;\log{\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}}\;}{\log{\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}}}} \tag{②} \)

①より、\(\dfrac{\;V_\text{B}\;}{V_\text{A}}=\dfrac{\;V_\text{C}\;}{V_\text{D}} \tag{③} \)

②、③より、\( \dfrac{\;Q_\text{AB}\;}{Q_\text{CD}}=\dfrac{\;T_1\;}{T_2} \)

物理や数学では、前問の式を利用して計算するということがよくあります。式を整理しながら、うまく計算を進めるコツを掴みましょう。

(5)

熱効率の式より、\( e=\dfrac{\;Q_\text{AB}-Q_\text{CD}\;}{Q_\text{AB}}1-\dfrac{\;Q_\text{CD}\;}{Q_\text{AB}}=1-\dfrac{\;T_2\;}{T_1} \)

熱効率は、\( \dfrac{\;吸収した熱量-放出した熱量\;}{吸収した熱量} \)
で求めることができます。

 

[4] X線の発生

模範解答

問番号 解答 問番号 解答
\( 8.2\times10^1 \)〔W〕 \( 6.6\times10^{-15} \)〔J〕
\( 1.3\times10^{16}\)〔個/s〕 連続
\( 3.0\times10^{-11}\)〔m〕    

解説

(1)

X線管の消費電力\( W \)は、\( \begin{align} W&=I〔\text{A}〕\times V〔\text{V}〕 \\ &=41\times10^3〔\text{V}〕\times2.0\times10^{-3}〔\text{A}〕\\ &=8.2\times10^1〔\text{W}〕\end{align} \)

(2)

電子の運動エネルギー\( E_e \)は、\( \begin{align}  E_e&=e〔\text{C}〕\times V〔\text{J/C}〕 \\ &=1.6\times10^{-19}〔\text{C}〕\times41\times10^3〔\text{J/C}〕\\ &=6.56\times10^{-15} \\ &≒6.6\times10^{-15}〔\text{J}〕 \end{align} \)

(3)

1秒当たりに衝突する電子の数\( n \)は、\( \begin{align} n&=\dfrac{\;I〔\text{C/s}〕\;}{e〔\text{個/s}〕} \\ &=\dfrac{2.0\times10^{-3}〔\text{C/s}〕}{\;1.6\times10^{-19}〔\text{C/個}\;〕} \\ &≒1.3\times10^6〔\text{個/s}〕 \end{align} \)

電流や電気素量などの物理量の定義と単位をしっかりと覚えて使えるようにしておきましょう。

(4)

X線管から発生するX線は,波長が連続的に分布している連続X線と特有な波長をもつ特性X線からなります。今回のように、入射した電子が失ったエネルギーがX線として放出されたものは連続X線になります。

X線には連続X線と固有X線があります。物理で用語問題が問われることは少ないですが、こういった問題を落とすのはもったいないです。計算方法だけでなく、問題の解き方や物理現象のしくみを自分の言葉で説明できるようになっておくと用語問題もすっきりと対応できるようになります。

(5)

発生するX線のエネルギーが最大となるのは、入射した電子のエネルギーが全てX線のエネルギーとなるときなので、X線の最大波長を\( \lambda_M \)とすると、

$$ \dfrac{hc}{\;\lambda_M}=W_e $$

\( \begin{align} \lambda_M&=\dfrac{hc}{\;W_e} \\ &=\dfrac{\;6.6\times10^{-34}〔\text{J}\cdot\text{s}〕\times3.0\times10^8〔\text{m/s}〕\;}{6.56\times10^{-15}〔\text{J}〕}\\ &≒3.0\times10^{-11}〔\text{m}〕 \end{align} \)

教科書通りの問題なので、特に難しいことはない問題ですが、波長が短い方がエネルギーが多いということをイメージとして身につけておきましょう。